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SOME KIND OF FOOL Pt.2 / TTUCKER PAYNE - 2010-02-19 04:05:40
やがて最下流付近の穏やかな大河に差し掛かる。

橋を渡る為に距離の長い急勾配の坂を登らなければならない。川から吹き上げる強烈な風が男の酸素を奪い去ろうと躍起になる。実際酸素が薄く感じられ、四肢の筋肉が萎縮する。先程かなぐり捨てた絶望の二文字がいよいよ現実味を帯びて来た。しかし、今ここで躊躇するのは何の意味も成さない。つべこべ考えるのは16:25発の特急の中だ。

橋の中程、更に吹き荒れる強風は容赦無くハンドルの自由を奪いにかかる。男はまだまだ見えぬ駅に思いを集中させる事しか出来なかった、半ば無理矢理に…。


難所と言うべき橋も永遠ではない。やがて道は下り坂となり、目の前にはひたすらに長い直線が伸びている。後はこの直線のラスト・スパートをやり通せば、計画はほぼ成功と言って良い。

通り慣れた、と言うにはちょっと烏滸(おこ)がましい道。それは殊の他長く感じられ、目的地迄の距離が上手く測れず体力の配分が難しい。もうすぐそこにある筈の駅も杳として見えて来ない。そして、男にとってそんな事はどうでも良かった。

最早、男の頭の中は、計画が成功を修め、素晴らしくも新たな世界が誕生する瞬間で埋め尽くされていた。目に入る景色も順調に流れて行く。丑三つ時の下見で見つけておいた交通量の少なそうな道も目論見通りがらんとしている。世界が自分を中心に回っている―――。男はそんな快感を覚え、もうすぐ始まるであろう理想世界への想いも相まって口元が弛んだ。

実際、いよいよ駅が見えて来た。益々顔が綻ぶ。この時点で16:23。最後の直線の随分早い段階から成功の喜びと油断に支配されていた男は、その事に気付く筈も無く、相変わらずだらしない顔を晒している。


男は、目的の特急を逃した。
 
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